夕立：ソロモンの悪夢

夕立は、1933年から1937年にかけてロンドン海軍軍縮会議の制約を考慮して設計された白露型駆逐艦の一つです。
この級にある全10隻それぞれに冒険と戦闘の濃い歴史があります。これらの艦は日本軍として、フィリピンとインドネシアの占領、
ミッドウェー海戦、ガダルカナル島の戦いなど、太平洋の海戦で活躍しました。

注目すべき点は、夜襲決行後の1942年11月、夕立の最後となる戦闘において、この小型艦がソロモン諸島を防衛するアメリカの艦隊と、
文字通り正面衝突した大型艦隊を先行して航行していたことです。アメリカの編隊は、艦隊同士の予期せぬ遭遇で大混乱に陥りました。
敵の艦隊は舵を切り、針路を変更し、最終的に切り離せないほど混同しました。その結果、40分にも及ぶ惨い接近戦に持ち込まれ、
夕立は敵陣の後方で孤立していることに気づきました。艦隊の旗艦である比叡が敵艦の集中砲火を受けているのを目の当たりにした夕立の艦長は、
戦地の激戦区域に舵を切りました。夕立は、2隻の敵艦に挟まれてしまい、軽巡洋艦のUSSジュノーと駆逐艦のUSSアーロン・ワードによる
一斉砲火を左舷と右舷から受けました。敵艦の執拗な砲撃を受けながらも、夕立はジュノーに魚雷を発射しました。次に放った魚雷が命中し、
ポートランドは艦体の大部分を損傷しました。その結果、損傷した船尾部の一部に「バンプステア」が生じ、USSポートランドは、
この戦闘が終結するまで旋回し続ける他ありませんでした。敵艦に向けて絶え間なく砲撃をしていた夕立は、USSスタレット駆逐艦を
友軍の艦と勘違いし、その勘違いの重い代償を払うことになりました。USSスタレットは、生存者を避難させるために停まっていた
日本軍の艦に魚雷を放ち、パワートレインの機能を停止させました。夕立の絶え間ない攻撃を受け続けたUSSポートランド重巡洋艦が、6回に渡る一斉射撃で、最後まで勇敢に戦い抜いた夕立を沈めたのは翌朝になってからでした。