『War Thunder』の新たな空
次期大型アップデート「ニューパワー(New Power)」にて導入する新要素に関する情報をご紹介します。
今回は『War Thunder』の新たな空についてお話しします。こちらは、更新されたゲームエンジン
「Dagor Engine」に関するシリーズ最初の開発ブログです。
「Dagor Engine」の以前のバージョンでは、空、雲、霧はそれぞれ別のアルゴリズムで作成され、
システムに統合されていませんでした。物理的に、『War Thunder』の空は非常に自然に近いものでしたが、
実際の空との視覚的な類似性をより高めることに焦点を当てていたため、結果的に大気現象との関係性が欠如していました。
「Dagor Engine」の新バージョンでは、空と地球表面の両方において、太陽光が正しく分布および散乱する現実的な
大気モデルの作成に成功しました。さらに、高度が異なる様々な種類の新しい雲を作成し、もやや霧の外観も大幅に向上しました。
積雲と高層雲の中での飛行(晴れの日の正午)
太陽光の散乱と吸収のモデルを変更しました。まず初めに、光散乱のスペクトルモデルを改善しました。
以前の空気の散乱光はレイリー散乱とミー散乱を考慮したものでしたが、モデルが簡素化されていました。
新しいバージョンでは、異なる条件下での空の色合いをより正確に再現可能なスペクトルモデルが使用されています。
また、オゾン層もゲーム内に適用しました。日中、主にレイリー散乱を理由に、私たちの惑星の空は青く見えます。
オゾンには太陽光スペクトルの特定の波長を吸収する性質があるため、日の出と日の入りの大気は青いままです。
また、オゾンの吸収により、より高い高度に位置する雲の色はオレンジやピンクになります。
太陽に照らされた雲(日の入り)
オゾンにより藍色に変化した空(日の出と日の入り)
今回ご紹介する中で最も顕著な改善は、雲への変更です。以前は、比較的薄い雲の層を1つだけ使用していたため、すべてのバトルにおいて
雲の位置を選択する必要がありました。現在、数百メートルから最大15キロメートルを上回る高さからなる対流圏の雲をモデリングしているため、
様々な種類の雲を同時にゲーム内に反映することができます。雲により形態型は異なり、最も風変わりで希少なものを除き、
すべての種類の雲をゲーム内に実装しました。積雲、層雲、高積雲、層積雲、高層雲、積乱雲、巻雲がゲーム内で表示されるようになり、
そして、各バトルの天候の設定に応じて、すべての雲を『War Thunder』の空に同時に発生することができます。
雲の下で雨が降っている場合は雨滴に光がより散乱するため、遠くからでもはっきりと雨柱を確認できます。
積雲と高積雲(夜明け) | 雲と雲の間を飛行する航空機 |
多重散乱がOFF/ONの時の積雲
雲や大気に分散・吸収された太陽光は、美しく変化に富んだ空をつくりだします。
雲の密度により、イルミネーションの色も明るい乳白色のもやから濃い灰色の雷雲まで、場所により異なる変化を遂げます。
雲を照らすため、雲の内側における太陽や空からの多重散乱を本物に近づけました。それぞれの雲が実際に光源となり、
雲の構造そのものが見るようになるため、雲の種類別にその不均等性をはっきりと目視できるようになります。
すべての雲が隣接する雲を照らし、影をつけることで、奥行きとボリュームがある曇り空の光景が創り出されます。
雨粒の柱の境界が明瞭な雲から降る雨
絵のように美しい光の柱(「God rays:神の光」)、または雲の陰影の背景と明確に識別できる太陽光線は、
薄明光線と呼ばれます。私たちは照明を十分に詳細化して作成しているため、この効果は、「Dagor Engine 6.0」において
自動的に取り入れられます。薄明光線と共に、ゲーム内では反薄明光線も確認することができます。
これは特に、霞んだ天気の中で高度で飛行している時に、太陽の横に現れます。これらの効果は、
部分的に太陽光線を伝達する雲の性質によりゲーム内に表示され、地面や雲自体だけではなく、全大気中の空気にも影を落とします。
雲の切れ間から差し込み輝く光の柱(日の入り) | 地表を高度から見た時の薄明光線(午後) |
霧やもやが本格的に大気の一部となります。新しいグラフィックエンジンでは、
雲や大気を作成するアルゴリズムと同様のアルゴリズムを用いて霧を作成します。
これにより、霧が均一ではなくなり、適切に散光するようになります。
朝日に照らされた霧
簡潔に言うと、『War Thunder』特有の大気が登場します!
この洗練された数理モデルにより、空、雲、散光の視覚的に正確な効果を、
高度を問わず地球上の至る所でシミュレーションすることができます。
200kmの低軌道で宇宙から見た地球の大気(ゲームエンジン上)
地球だけではありません!例えば、大気の濃度と厚さ、オゾン層の性質、惑星の大きさのパラメーターを設定するだけで、
火星の夜明けをシミュレーションすることができます。火星の大気は非常に薄く、レイリー散乱が青い光を吸収する時間がないため、
夕焼けが青く見えます。オゾンは非常に少なく磁場がないため、赤い惑星の大気中に均等に分散されます。
また、水蒸気はありませんが砂嵐が絶えず発生しています。火星探査車「キュリオシティ」からの画像と私たちの
モデリングを比較してみてください。非常によく似ていませんか?
NASAが撮影した火星の夜明け(NASA)(※リンク先は英語表記) | 「Dagor Engine 6.0」の火星の夜明け |
The War Thunder Team
その他の開発ブログ:
|
|
|