『War Thunder』:R-24・R-27・AIM-7ミサイルダイナミクス比較
当初、『War Thunder』におけるソ連第4世代ジェット戦闘機MiG-29 フルクラムの「弓矢」は、赤外線ホーミングシーカー及びレーダーホーミングシーカー付きのR-27ミサイルでした。このミサイルは、ゲーム内の他の中距離ミサイルと比較し、機動性が僅かに優れているのが特徴です。しかし、追加武装としては、アメリカの第4世代ジェット戦闘機F-14やF-16の「弓矢」であるAIM-7Fシリーズよりも、その射程距離が遥かに短くなってしまいます。また、推力が低いことからR-24の有効範囲より若干小さくなっていました。そこで、MiG-29 フルクラムの2つ目の空対空誘導兵器であるR-60Mが、戦闘特性においてAIM-9Lに劣っていることを考慮し、MiG-29にR-27ファミリーの高度なミサイルであるレーダーホーミングシーカー付きのR-27ERを装備することにしました。このミサイルは、AIM-7Fより出力重量比がやや高いものの、搭載機器の動作時間がより短いことから、AIM-7Fと同等の有効範囲を有します。
ミサイル | AIM-7F | R-24R | R-27R | R-27ER |
ΣΔV, m/sec | 950 | 735 | 720 | 1190 |
重量, kg | 231 | 244 | 253 | 350 |
出力重量比, kg*p/kg | 84 | 63 | 62 | 94 |
誘導時間, sec | 75 | 45 | 60 | 60 |
正面からの射程距離(Vl=Vt=1M), km | 43 | 33 | 35 | 44 |
正面からの射程距離(Vl=Vt=2M, N+10 km), km | 94 | 48 | 74 | 85 |
最大横加速度, G | 25 | 25 | 30 | 30 |
R-24R、R-27R、R-27ER、AIM7Fパラメータ比較表
上記の図表からも、 R-27の出力重量比がR-24シリーズよりも低くなっているのが確認できます。残念ながら、この理由を裏付けるデータは持ち合わせていませんが、より重いモジュールの設計によって発生すると推測しています。
また、R-27ERミサイルに関して、中距離ミサイルの中では出力重量比が他よりも優れているため、加速力ではAIM-7Fを上回り、中距離での有効性が増すことを忘れてはいけません。しかし、高高度で発射速度が速い場合であれば、より長い誘導時間を有するAIM-7Fは、R-27ERを凌駕することが可能です。
MiG-29の利用可能な推力
『War Thunder』にMiG-29を実装した当初、なぜゲーム内の航空機の静推力(static thrust)が製造会社の実際に公表しているスペックより下回っているのか、という質問が多く寄せられました。これにはさまざまな理由がありますが、その概要をご説明しましょう。
アフターバーナーを最大に使用した際の静推力は8,300kgf(重量キログラム)で、アフターバーナーを使用しない場合の静推力は5,040kgf(重量キログラム)です。この推力は製造会社によって0mと0km/hの条件下で設定されたもので、吸気ダクトで失われる推力や、搭載している機器の動力供給装置、そして航空機にエンジンが取り付けられた際に生じる要因などが考慮されていません。
この航空機の主な参照元(「Аэродинамика самолёта МиГ-29」)によると、搭載されたエンジンでアフターバーナーを最大に使用した際の静推力が8,000kgf(参照元「ПОЛНЫЙ ФОРСАЖ」)で、最高速度においては4,900kgf(参照元「МАКСИМАЛ」)であり、どちらとも公表されているスペックより300kgfと100kgf低くなっています。以上のグラフはMiG-29に搭載された吸気装置の影響、つまりは吸気ダクトや上部の吸気が設けられた危険域内の吸気口が反映されていません。また、離陸時には、固形物が入り込んでエンジンが損傷するのを防ぐため、吸気装置の吸気口は軸流口を完全に塞ぎ、エンジンに向かう空気はすべて吸気口下部に開けられた小さなスロットや上部の吸気口を通り抜けます。この状態のエンジンでは空気が十分に供給されていないため、グラフの3.16や3.17に記された推力を得ることはできません。
低速時、リストに記載された性能を発揮することも不可能です。なぜなら上部と軸上の吸気口からそれぞれ流入してくる割合が不均等に混在するため、吸気口の気流が不安定となり、結果としてエンジンに十分な空気が供給されなくなります。この現象は同参照元にも記されています。
さらに、エンジンは数多くの自動システムによって制御及び調整されているため、推力やエンジン回転数が抑えられる場合があります。
その結果、上記で挙げた要因によって利用可能な推力が減少し、低速時に最も顕著に影響を受けます。この利用可能な推力のグラフには、アフターバーナーとスピードモードそれぞれの最大値が表示されています。フライトモデルが利用可能な推力を稼動するため、ゲーム内のエンジン性能は利用可能な静推力で測られるようになっています。
利用可能な推力の推定は、航空機の推力重量比から必要な推力を差し引いて算出される利用可能な縦加速度Nx(Fig. 5.3, 5.4)のグラフから間接的に計算されたおおよその値と一致します。また、利用可能な推力値は最高速度のグラフ、上昇率のグラフ、旋回率のグラフ、そしてブレーキ解除時からの離陸速度や発進時の加速(パラグラフ8.3.2参照)からも読み取ることができます。現時点では、ゲーム内の航空機のこれらすべての特性は、公表された数値と極めて同等か僅かに上回る結果でした。