艦砲の発射体による破片ダメージ


今回の開発ブログでは、大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」と共に実装を行いました艦砲の発射体による破片ダメージの新たなモデリングについて、『War Thunder』の艦艇ゲームデザイナーがお話しします。

要約:大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」では、艦砲の発射体による破片ダメージに変更を加えました。以前は、パフォーマンス処理上の制約により、生成される金属片の最大数は本来よりも少なくなっていました。これに加え、各艦艇の発射体によるダメージのパラメーターは、手動で個別設定する必要がありました。私たちは、パフォーマンスを低下させることなく、金属片の数を計算する際の柔軟性を高め、生成される金属片の数を増加させることを可能にする新システムを開発しました。これに伴い、ジオメトリに関する問題のせいで、一部の艦艇が被るダメージ増加が引き起こされていましたが、その多くはすでに修正を行いました。他に発生する可能性のある問題については、皆さまからのフィードバックを慎重にチェックし、必要に応じて修正を行う予定です。

ダメージの種類と要因



ゲーム内において、艦砲の発射体が与える全てのダメージは、次の3種類に分けることができます:発射体の速度と重量に応じた運動エネルギーによるダメージ、炸薬量に応じた爆発によるダメージ、最後は破片化によるダメージ、つまり発射体の速度と重量、爆発物の重量、および充填された爆発物の割合に応じてダメージを与えます。『War Thunder』の海戦では、さまざまな種類の発射体が使用され、通常は異なる種類が複合されて、ダメージを与えます。

艦砲の砲弾のダメージモデルへの変更は、破片ダメージにのみ影響しており、本開発ブログで今回説明するのは、このダメージについてとなります。

変更理由



大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」の実施前まで破片ダメージの計算には、2つの大きな問題がありました。一つ目は、金属片フィールドが形成される際の計算によるパフォーマンス低下の問題によって、各発射体で生成可能な金属片の最大数は大幅に減少していたことです。例えば、現実の砲弾は3,000個もの金属片を生み出すにもかかわらず、ゲーム内では200個も生成できないことがありました。これは、海戦では一度に多数の一斉射撃によって数千発近い砲弾が発射され、それに伴う金属片の数を計算することはFPSの急激な低下を意味し、これを回避する必要があったためです。

2つ目は、最初の問題から派生した問題です。というのも、上記のような条件下では、各発射体によるダメージのパラメーターを手動で個別設定せざるを得ませんでした。各艦砲の砲弾モデルは、金属片の装甲貫通力や、形成された金属片フィールド範囲内における拡散の最大距離など、いくつかのパラメーターに従って構成されています。しかし、これらの調整作業を行うには、長い時間と労力を要するだけでなく、意図せずに発射物を強化したり弱体化したりしやすいため、バランスの観点からは非常に不安定な方法でした。

大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」の破片ダメージ計算方法



大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」前におきまして、金属片による破片ダメージが艦艇にどのような影響を与えていたのかを振り返ってみましょう。ここでは、瞬発信管を備えたHE弾(榴弾)の発射体を例にして考えてみましょう。これがオブジェクトに命中すると、導火線が爆発物を起爆させて、爆発性の球体を生成します。前述したように、中型および大型の弾殻からは、約200個の金属片が生成されます。この爆発性の球体は、装甲貫通力(破壊力)、サイズ、ダメージのパラメーターを有しています。爆発の威力が装甲を貫通するのに十分な場合、HE弾(榴弾)によるダメージは、その背後に位置し、破壊範囲の半径内にあるすべてのモジュールに与えられます。さらに、ノーズコーンから形成される一部の金属片も、形成された隙間に入り込みます。発射体が形成できる金属片の総数の約10~12%(わずか20個程度)が、貫通した装甲を通り抜けます。爆発の威力が装甲を突き破るのに十分でなければ、金属片が装甲の背後に生まれることはありません。

ひとたび装甲の後ろに回ると、ノーズコーン内の金属片は艦艇モジュール、次の装甲層、または構造の一部に命中する可能性を有します。金属片は独自の装甲貫通パラメーターを持つため、次の装甲層を貫通することもできますが、阻止される場合もあります。それと同時に、飛翔距離とその前に破壊した装甲に応じて、装甲貫通力が減少します。

装甲を貫通して亀裂が発生すると、金属片は開口角が60°の円錐状に飛散します。そして、飛散した金属片は通常とは異なる角度で、軌道上のあらゆるものに衝突します。その中には、それ以上の装甲を貫通できない金属片や命中すらしない金属片もあります。その結果、砲弾が爆発した位置とは反対側に配置された艦艇モジュールは、ノーズコーン全体が与えるダメージよりも少ないダメージを受けます。例えば、20個の金属片が貫通したと仮定した場合、モジュールに命中するのは半分以下の8個程度です。

また、金属片による効果のパラメーターは、手動で調整する必要がありました。モジュールにダメージを与える可能性のある金属片の数は少数であることが分かっているため、金属片によるダメージと発射体が持つ他のあらゆるタイプのダメージの比率を適切に保つため、一つの金属片によるダメージが高くなる可能性がありました。しかし、円錐内の金属片ダメージの合計が、発射体全体の爆発によるダメージや運動エネルギーによるダメージを超えないよう、一つの金属片の最大ダメージを大幅に大きくすることはありませんでした。

大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」の破片ダメージ計算方法



金属片によるダメージは正常に機能するようになりました。金属片を計算するための新システムを開発したことにより、各発射体がその性能特性に応じ、可能な限り多数の金属片を生成できるようになったほか、パフォーマンスを低下させないだけでなく、場合によっては改善することさえ可能です。

数年前、私たちは装甲貫通力の計算をJacob de Marre式へと移行しました。その結果、装甲貫通力の計算に、統一されたアプローチを使用できるようになりました。金属片を計算するための新システムによって、各発射体に対して、全く同じように自動化されたアプローチをとることが可能になりました。

金属片の最大数、装甲貫通力、ダメージ、および拡散範囲は、すべて自動的に計算されるようになりました。例えば、100mmおよび305mmの砲弾において、これらのパラメーターの違いがより現実に近いものとなり、全体的により一層正確になりました。

上記で説明したのと同じ状況において、装甲上で砲弾が爆発した場合、10~20個ではなく、50~100個の金属片が装甲を貫通するようになりました。これにより、装甲を貫通する金属片の数が増加したため、装甲に守られたモジュールに命中する可能性が増加しました。

装甲貫通力、ダメージおよび飛距離のパラメーターは、全て個別に更新されています。一部の砲弾ではやや増加し、中には少し減少した砲弾もありますが、艦艇の砲弾が生成する金属片の最大数は相対的に増加しています。

また、艦砲の発射体の金属片を発生させる区分も少し変更しました。先端、中間、末端を含む3つの区分にしています。先端の60°の角度を有する円錐部分には、発射体が生成する約15%の金属片が含まれています。また、中間部分には、75%の金属片が含まれていて、最後の末端部分には残りの10%が含まれています。

運動エネルギーダメージ、爆発ダメージ、さらに加圧ダメージなど、その他のダメージモデルの種類に変更はありません。瞬発信管を備えたHE弾(榴弾)の貫通能力は増加することがなくなり、代わりにより多くの金属片による破片ダメージを与えるようになりました。

フィードバックに対する見解:新ダメージメカニクスにより艦艇が一撃で破壊されることはあるのか?



大型アップデート「アルファストライク(Alpha Strike)」の実施後、100~140mmのような脆弱な砲弾で、大型の艦艇が破壊されるというフィードバックをいただきました。また、1発の砲弾で艦が破壊されてしまう旨のフィードバックも寄せられました。

このフィードバックを確認後、私たちは直ぐに調査を開始し、ジオメトリにエラーが存在する複数の艦艇を特定しました。例えば、USS アリゾナと伊勢型戦艦「日向」では、主口径砲塔の下部の揚弾筒付近に発射体が命中すると、弾薬庫が爆発する場合がありました。つまり、ダメージが揚弾筒を通過して、それが弾薬庫の火災へと繋がっていました。また、長門型戦艦「陸奥」の艦首にある弾薬庫においても、喫水線付近の艦体に砲撃を受けた際に爆発することがあり、同様のエラーが他にも複数の艦艇で発見されました。これらのエラーは早急に対応し、修正作業を行ったため、報告された問題はすべて改善されました。これからも皆さまから寄せられるフィードバックを注視していき、報告される問題に対して迅速な対応を行ってまいります。もし問題が発生した場合は、不具合報告プラットフォーム上から報告を行っていただけると、不具合を再現することが容易になり、素早く修正することが可能になります。不具合を発見した場合は、こちらから報告をお願いいたします。

副口径砲弾が主口径砲弾よりも効果的になったというのは事実ですか?



艦艇の装甲は正しく機能しており、通常は貫通または突き破ることのできない砲弾が通り抜けることはありません。つまり、HE弾(榴弾)の装甲貫通力は強化されておりません。

そうとは言ったものの、非常に特殊な事象が重なったことにより、装甲がほとんど施されていない艦艇の下部に、発射体が命中することがあったという不具合を発見しました。直近のアップデートでこの不具合を修正したため、再発することはありません。

さらに、私たちはキルログのメッセージを生成するアルゴリズム、およびそこに含まれる情報を見直していく予定です。また、戦闘中にプレイヤーが相手に与えたダメージについて、より詳細な情報を追加することも計画しており、皆さまの混乱を一日でも早く解消したいと考えております。

最後までお読みいただきありがとうございました。



The War Thunder Team