M1 エイブラムスの車体装甲


主力戦車エイブラムスシリーズの装甲、特にDU(Depleted uranium:劣化ウラン)装甲の存在に関する疑問を多く目にします。そこで、今回は私たちが収集した本トピックに関するデータを共有したいと思います。

放射線の安全性に関するデータのほとんどは、乗員に対する唯一の脅威として、砲塔側面にある装甲パッケージからもたらされると明記しています。そのため、『War Thunder』に登場するM1A2 エイブラムスは、砲塔側面にウラン装甲を有しています。

 

参照元:The Medical NBC Battlebook, USACHPPM, 2011.


私たちは、エイブラムスを改造した複数の不特定な実験車両が、その車体に強化されたDU(Depleted uranium:劣化ウラン)装甲が装備されたことを把握しています。しかし、これらの実験車両で装甲が強化されたとしても、どの派生型のエイブラムスなのかを特定する情報源がないため、『War Thunder』に登場するエイブラムスの派生型のいずれかが、実際にこの特定の車体装甲による強化を施されていたと断言することはできません。

 

アメリカの陸軍学校にある5両の戦車にDU(Depleted uranium:劣化ウラン)装甲が使用されていることを記載した文書の一部。

参照元:Nuclear regulatory commission renewal license application for DU armor.


私たちが入手した報告書に記載されている内容には、M1A2 SEP V1またはM1A2 SEP V2の改良型にDU(Depleted uranium:劣化ウラン)装甲が採用されたという明確な証拠は示されていません。高密度の充填材による装甲の強化に伴う重量の大幅な増加も、M1A2 SEP V1またはM1A2 SEP V2では確認することができませんでした。

 

M1 エイブラムスの改造による重量変化。

参照元:An Independent Assessment of the 2040 Battlefield and its Implications for the 5th Generation Combat Vehicle (5GCV), Department of the Army Office of the Assistant Secretary of the Army, 2023"


さらに、このような装甲パッケージによる大幅な重量増加は、最初の一対になっているトーションバーに過負荷をかける可能性があります。M1 シリーズでは、正面装甲が車体のかなり前方寄りに配置されていることや、運転席の両側に大きな装甲化された燃料タンクがあることから、トーションバーへの負荷がすでに増しています。

低密度で質量効率の高い充填材を実装するには、必然的にサイズを拡大することが必要になりますが、これはM1 エイブラムスの一連の改造では確認できません。

 

装甲の耐久性を大幅に増加させる装甲板が追加されたM1 エイブラムスシリーズの車体装甲パッケージのデモンストレーション。

参照元:"Svenskt pansar igår, idag och imorgon" by Rickard O. Lindström.


また、M1A2 SEPに劣化ウランが使用された証拠として、プレイヤーの皆さまが挙げている情報源についても言及したいと思います。

Боевые машины Уралвагонзавода. Танк Т-72(ウラルヴァゴンザボード社製の戦闘車両。T-72戦車)

この本は、特に現代の西側諸国が所有する兵器について信頼できる情報源とは言えません。著者らがこの本を執筆したのは、 SEP(System Enhancement Package:システム拡張パッケージ)が実用化された直後であり、記載されている情報は著者による憶測や推測に過ぎません。また、本書は入手可能な他のオープンソースデータと比較すると、ソ連戦車の特性に関する誤った情報も含まれています。

MATERIALS LICENSE from U.S. NUCLEAR REGULATORY COMMISSION(米国原子力規制委員会からの物質許可)

M1 エイブラムスシリーズの車体への劣化ウランを取り扱う許可は、これらの実験的な車両は、例えば戦車学校にある5両の戦車について適用されている可能性があります。これらの文書には、どの改造に劣化ウランが使用されたかどうかについては明記されていません。

M1 Abrams Main Battle Tank, Owners' Workshop Manual(M1 エイブラムス主力戦車 オーナーズ・ワークショップ・マニュアル)

本書は、M1A2 SEPまたはM1A2 SEP V2の車体に劣化ウラン装甲が追加されたことを直接示唆しているわけではありません。M1A1SAに行われた変更が、M1A2 SEP V2にも導入されたという曖昧な言葉のみです。さらに、ここに記述されている情報は二次資料であるため、他の独立した二次資料も必要になります。

The Army's Future Combat Systems Program and Alternatives(アメリカ陸軍フューチャー・コンバット・システムと代替案)

ここで述べられているのは、第3世代におけるウラン装甲の使用のみであり、この装甲がM1A2 SEPの車体に配置されていたこと、あるいは「第3世代」が具体的にどのような構成であったかについては明記されていません。

 

M1A2 SEPの主な変更点

参照元:The M1A2: Current and Future Program Plans, US Army Armor Center, 1997


他のデータによる予測を考慮すると、エイブラムスの装甲がさまざまな改良を経て変更されたとしても、装甲自体の実際の防御力の増加には直接繋がらない可能性があります。これらの変更はむしろ、装甲充填材の衝撃時の生存性を高めることを目的としていた可能性があります(これは、現在ゲーム内に実装されていない機能です)。そのため、防御力の具体的な向上を裏付ける確かな数字と確固たる事実がなければ、M1シリーズの装甲は現在提供している防御力から変更することはありません。

しかし、エイブラムスに対する私たちの取り組みが、これで終わるわけではありません。エイブラムスの防御に関しては、機密解除および公開された入手可能な情報の調査を継続するつもりです。私たちは、この議論に深く感謝しています。今後、有力な情報源から装甲の強化が検証されて、裏付けが取れた場合は、それに基づいた対応を行います。

このトピックにご注目くださったコミュニティの皆さま、さまざまな議論を提起してくださりありがとうございます。今回の開発ブログが皆さまの参考になり、現在のエイブラムスに対する私たちの見解をご理解いただければ幸いです。


 

The War Thunder Team