フィアット BR.20 DR - 冷酷な軍用機

BR.20の物語は、イタリア空軍が新しい爆撃機の設計要件を出した1934年に始まります。
ほぼ全てのイタリアの航空機製造メーカーは爆撃機の設計案を提出し、イタリア空軍によってそのうちの3つが受け入れられました。
その中にフィアット社のBR.20があったのです。
フィアット社は新しい航空機を早急に設計して開発しました。
その翌年に設計が完成し、試作型が製造され、1936年に試行運転がなされました。
BR.20は飛行中に好ましい操縦性を試行運転中に見せ、試行運転をしていた搭乗員は感動を覚えました。
しかし、さらにもっと重要なことは、コウノトリが試験中に的確な爆撃で好印象を残したことでした。
コウノトリは高度4,500メートルから、目標物から11メートル以内に正確に爆弾を落とすことができたのです。
垂直に爆弾を搭載していた従来の方法と違い、水平に搭載された爆弾を狙う際、
爆撃手の視界がとても良くなったため、このレベルの正確性が生まれたのです。
このパフォーマンスにイタリア空軍は感銘を受け、初期製造モデルをすぐに注文したのです。

1936年の夏の終わりに最初の型が部隊に到着した後、搭乗員と整備士は、この航空機の欠点にすぐに気がつきました。
主な欠点は、フィアット A. 80 R.C. 41の星型エンジンの信頼性が低く、維持することが困難なところでした。
それにも関わらず、この航空機にはスピード性と耐久性、そして高い防御力が備わっていたので、スペイン内戦の炎の中で活躍したのです。
これらの特性は他の国の興味を惹き、旧式の三菱九三式重爆撃機の代替となる現代的な航空機を探していた日本は特に興味を持ちました。

この航空機の能力に強く感心し、日本は82機のBR.20sを自国軍のために発注しました。
そして、BR.20をイ式型100（連合軍により「ルース」と愛称がつけられました）へと再設計しました。
しかし、1938年夏のアジア地域における最初の戦闘任務の後、日本のBR.20の搭乗員はこの航空機の欠点に気付きました。
その欠点とは主にエンジンの信頼性の問題と火力についてででした。
このことで、この爆撃機は第一線から早急に退きました。
1939年の日本空軍での最後の出撃の後、BR.20は訓練用航空機となり、そして1941年の終わりにはその役目からも撤退しました。

日本とは違い、イタリアはより多くのBR.20を使用しただけではなく、大戦を通じて広範囲にわたって使用しました。
戦時中は、BR.20はイタリアの主要な爆撃機であり、フランス、マルタと北アフリカで活躍しました。

1936年から1943年に間に日本に輸出したモデルや、様々な派生型も含めて、合計で500機以上のBR.20コウノトリが生産されました。